またもや、勝訴の見込みがほぼゼロの提訴が行なわれました。
Yahoo!ニュース - 毎日新聞 - <固定電話加入権>法人37社など、NTT相手に集団提訴という記事です。
固定電話の「電話加入権」の料金値下げで保有する加入権の資産価値が下がったとして、39都道府県の法人37社と個人69人が30日、国とNTT東日本、西日本などに対し約1億円の賠償を求める訴訟を東京、大阪の両地裁に起こした。固定電話加入権を巡る集団訴訟は初めて。以下、簡単化して私見を述べます。
訴えによると、NTTは昨年3月、固定電話を新規開設する際に加入者が払う施設設置負担金(加入権料)を1回線当たり7万2000円から3万6000円に値下げした。原告側は「加入権は税法でも資産と認められる財産権。値下げにより取引価格が下落するなど損害を受けた」と主張。値下げした同社と認可した国に対し、値下げ分の賠償を求めている。
NTT側は「財産権の侵害に当たらない」と主張している。
基本的な話から書き始めますと、モノの価値というのは、一意に決まるものではありません。
これは万物に当てはまります。
そうした常識を理解できていない人達が、お金欲しさのために訴訟に踏み切ったのでしょうね。
嘆かわしいことです。
モノの金銭上の価値は何で決まるかと言いますと、売買交渉の結果で決まります。
骨董品が良い例です。
アンティーク品に「100万円出しても良いからぜひ譲って欲しい」という人がいる一方で、同じ品物に対して「せいぜい1万円程度の価値しかない」と言う人がいるというのも、そう珍しい話ではありません。
電話の加入権も、実は全く同じ話なのです。
NTTから買う場合の定価はあっても、加入権の転売をする人にとっての定価は存在しません。
お客さん相手での相場で決まるものでしかないのですから。
価値が変動するものに、資産価値が減少したと難癖を付けること自体、おかしいですよね。
そもそも、加入権の転売業者は、NTTの定価よりも遥かに安い価格で加入権を買い取って、定価よりも少し安い価格で販売して、利益を上げて来たわけです。
自ら加入権の価値の変動に荷担して来た人達が、「定価が変わって財産としての価値が下がった」などと言うのは、天に唾を吐くような話で、通るはずがありません。
電話の加入権の金銭的価値は、誰かが保証して決めたものではないのです。
あくまで、電話回線を引く際の「設備に関する相応の負担金は払っていますよ」ということの証明こそが電話加入権の価値であり、転売行為が禁止されていないものの、金銭的価値をNTTが保証するものではありません。
私自身、20年ほど前にNTTから加入権を買いましたが、不要になってもNTTが加入権を買い取ることがないことは、ちゃんと説明を受けた記憶があります。
財産の一種であることは否定しませんが、金銭的価値が一定とされるような(そもそも、前述のように、そんなモノはこの世に存在しません)特別な財産ではないことは、NTTから電話加入権を買った人なら誰でも知っているはずです。
そして、裁判を起こすと言うことは、訴訟を引き受けた弁護士がいるということですよね。
弁護士には、最低限の経済的知識を身につけて欲しいものです。
さらに言うと、メディアにも、経済的観点からコメントをつけて報道することを提案したいですね。
「提訴が行なわれた」という事実の報道だけなら、どこのメディアにだって出来ます。
将来は、裁判所がRSS配信するようになるでしょう。(もちろん、プライバシーの問題はありますから、公開・非公開に関する規準は重要ですが。)
そうなった時のメディアの真の価値とは、良識・常識があるか、そして事実をどのように解釈するべきかを事実と併せて伝えられるかどうかだと、個人的には思っています。
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