感染列島【感想】

TSUTAYAのDISCASでDVDをレンタルして見ました。
最近は新型インフルエンザの脅威もそれほどではないと分かって来ましたが、上映当時はパンデミック(感染爆発)についてこれくらいの想定はあったのだろうと思います。

見ている最中、本作品でのウィルスの発生源が分かった辺りから、ウィルスの感染範囲の設定に疑問を持ちました。
ウィルスを日本に持ち込んだ立花医師は、間違いなく、飛行機で日本を離れたはずです。
入国後に病状が悪化して駅で咳をして吐血するくらいなのですから、その後、空港から彼と同じ飛行機に乗り合わせた人の誰一人感染しないで済んだとはとても考えられません。そう考えると、感染は全世界に広がっていたはずです。
しかし、WHO加盟国の中では日本以外に発症者が見られないというのは、不思議でした。

また、何より、医療従事者が、自分が未知のウィルスに感染しているかも知れないと気付いた上で、病院にも行かずに公共交通機関を利用して国内を移動して出国するなど、あってはならないことだと思うのです。
そういった点に関する言及が無かったのも、少なからず不満でした。
あるいは、国外で活動する日本人医療従事者に対する何らかの皮肉だったのかも知れないなと思ってしまいました。

主人公の松岡と栄子、ハッピーエンドだと良いなと思っていたのですが、残念な結果になってしまいました。
思えば、病院で酸素吸入器が足りなくなった時、助かる見込みの低い患者から助かる見込みの高い患者へと機器を回すことにして、皆が嫌がる機器を外す行為を栄子が率先して行ない、機器を外された患者が当然間もなく息を引き取ったことがあったのですが、あれが栄子の罪として、死亡フラグになっていたのかなと思いました。
もちろん、あのような状況では、第三者の立場で合理的に考えれば、栄子の決断は間違ってはいなかったでしょう。
でも、実際にそれを実行に移せる医療従事者は少ないのでしょう。医者としての良心の呵責であったり、事実を知った機器を外された側の患者の遺族からの訴訟に対する心配であったり、とにかくハードルの高い行為ですし、どういう選択をしても自責の念に駆られることは想像がつきます。
ある意味、栄子自身の死によって、幕引きを図ったとも言えるのかなと思いました。

また、本作品では、たまたま同じ時期に鳥インフルエンザの発症があった養鶏場一家のことが描かれています。
結果的に、鳥インフルエンザとはまったく無関係だったわけですが、養鶏場の親子に対する社会の反応は冷たいものでした。
その結果、父親は養鶏場で首を吊って自殺、唯一の救いは、娘が、国外からウィルスを持ち込んだ立花医師の娘の血清によって助かったことでしょうか。

松岡の先輩の安藤医師や同僚の三田看護師の死など、思わず涙腺が潤んでしまう場面も多々ありましたが、色々と考えさせられることの多い映画でした。
ぜひ、医師や医療従事者を志す若者に見て欲しい映画です。