最近、マスコミを賑わせている事件の一つとして、ワールドオーシャンファームが手掛けたフィリピンでのエビ(ブラックタイガー)の養殖事業への投資詐欺事件が挙げられます。
確かに、被害者は可哀想だなと思います。定年後の生活資金を失った人も少なくなかったでしょう。
もちろん、私自身、詐欺師を肯定する気は微塵もありません。
しかし、今回の被害者は、どうして「おかしいぞ」「詐欺ではないか」と気が付かなかったのだろうか、と不思議でなりません。
有名な(?)詐欺師が手掛けただけあって、騙されやすかったのだろうなとは思います。
しかし、なぜすぐに「そんなにうまい話があるわけがない」と気が付かず、どんどん投資額を増やして、されに友達まで誘ってしまったのでしょうか。
今後、同様の詐欺被害に遭う人を少しでも減らせるように、気をつけるべき点を挙げてみたいと思います。
大きく、2点、「利益率」と「損益計算」の観点で述べます。
まずは、「1年で2倍の配当」という利益率です。
これは、例えば消費者金融で目いっぱい借金して、今回の養殖に投資していれば、十分過ぎるほどのおつりが来て、楽して不労所得を得られることを意味しています。
そんなうまい話があったら、消費者金融で多重債務に陥る人など、いるはずがありませんよね。
報道によると、この会社(ワールドオーシャンファーム)は、1年で2倍で、10年で32倍という説明をしていたそうです。
「事業が失敗するということは?」という質問に対しても「ありません」と自信満々で答えていたとのこと。
つまり、ローリスク・ハイリターン以上の、ノーリスク・ハイリターンと説明していたわけです。そんなものは、あったとしても、広く知られるわけがありません。
巧みな話術に冷静な判断が出来なくなっていたのでしょうけど、出資者は欲に目がくらんで冷静な判断ができなくなっていたというのも事実だと思います。
2番目は、損益計算です。
以下、私なりにかなり単純化して試算してみました。
と言っても、算数の範囲で説明できる話です。
仮に、東京ドーム450個分の養殖場があったとして、東京ドームの面積は46,755平方メートルなので、合計面積は21,048,750平方メートルです。
大きなエビ(ブラックタイガー)を出荷可能なくらいの大きさまで育てるには、1平方メートルで年間3匹くらいと仮定します。魚と違い、エビは沼地の底にいて、回遊することもないので、相当楽観的に考えてもこれくらいの密度がいいところでしょう。
稚魚の購入費、環境の維持費などを考慮して、1匹の利益を100円と仮定して、養殖場の面積から、年間の利益は合計6,314,625,000円、すなわち63億円です。
もちろん、これは、極めて順調に海老が育ったと仮定しての話です。
さらに、63億円の利益があっても、日本国内の会社自体の維持費(役員・社員のお給料や、広告宣伝費、事業所の賃料など)を考えれば、20億円残れば良いところでしょうね。
逆算すると、この養殖場の利益から2倍の配当がもらえるのは、出資額として10億円がいいところでしょう。
ところが、出資者数は4万人、出資金額は600億円とも言われています。
60倍も多く集めていたのでは、破綻するのは目に見えています。
しかも、出資額が年々増えているのですから、当然、養殖場の面積も年々倍にしないと無理な話です。
でも、養殖場の面積を毎年倍にするなどという計画はなかったようですし、事業計画をちゃんと見れば、早晩破綻することは明らかだったはずです。
報道を通して思うのは、どうしてこんな簡単な中学生くらいでも分かる「おかしいぞ」という発想が、騙された側に出て来なかったのだろうか、ということです。
結局のところ、義務教育の問題なのでしょうか。
だとしたら、これからも、こうした詐欺に騙される人は後を絶ちそうにないですね。
もちろん、「1年で100%増やす投資方法は絶対に存在しない」と言うつもりはありません。
おそらく、あるとは思いますし、私自身、株式投資でそれを目指して日夜研究をしています。
ただし、株式投資は、ハイリスク・ハイリターンであり、今回の詐欺事件のようなノーリスク・ハイリターンとは話が全然違います。
実際、株のデイトレードで成功している人の中には、それ以上の利益を出している人もいるようですから、「1年で100%はあり得ない」と断言することは出来ないでしょう。
でも、存在するとしても、そのノウハウは、決して大々的に宣伝されたり、情報商材として販売されたりすることはありません。
断言できるのは、『多くの人が「真似るだけで」あるいは「投資して放っておくだけで」同じようにぼろ儲けできるようなノウハウ』は、世の中に存在しないということです。
■2008/7/2 追記
急にアクセスカウンタが跳ね上がったのでアクセス解析をしたところ、本記事へのアクセスでした。
Yahoo!のニュースに、リンク先として紹介されたからのようです。
メジャーサイトからリンクしていただけるのは、嬉しい反面、ちょっと恥ずかしい気もします。
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