グッドウィルの「装備費」天引き問題

日雇い派遣会社の問題は、長引きますね。
一連の報道を見ている限り、明らかに雇用側(グッドウィル)に問題があると思います。
訴訟の結果は、労組側の勝訴で間違いないでしょうし、そうであって欲しいと思っています。

とは言っても、個人的には、一連の行動を疑問に思わなくもないです。

Yahoo!ニュース - 毎日新聞 - グッドウィル 労組員が返還訴訟「装備費」天引き問題での記事からの引用です。

 人材派遣最大手のグッドウィル(東京都港区)が日雇い派遣の労働者の給与から「データ装備費」名目で不透明な天引きをしていた問題で、派遣労働者の労組「グッドウィルユニオン」のメンバーは23日、データ装備費は不当利得だとして、同社を相手取り同費用の全額約455万円の返還を求める集団訴訟を東京地裁に起こした。同じような天引きが多くの人材派遣会社で行われてきた経緯があり、同費用を巡る初の訴訟により不透明な使途がどこまで解明されるのか注目される。
 訴状などによると、訴えたのは同労組の組合員で20~40代の男性26人。最多の請求は10年分で40万3400円(2017回の稼働分)に上る。データ装備費は徴収に法的根拠もなく、使途も不透明な不当な利益だと全額返還を求めている。

26人で総額455万円ということは、1人あたり平均17万5,000円といったところです。
多い人は40万円と報じられていますので、逆に、少ない人は10万円以下なのでしょう。

確かに、10万円と言えば、日雇い労働者の人々にしてみれば月収に匹敵する場合もあるでしょう。
戻って来るものならば、返してもらいたい、という気持ちは分かります。
さらに、そもそもグッドウィルの不当な利得なのだから、金額の大小に関係なく、全額労働者に返還されるべき、という主張も、論理的には理解できます。
私自身も、おかしなことには、はっきりと、クレームなり意見なりをする性格ですので。

ただ、訴訟に踏み切るかと言うと、そこまではしないかも知れません。
訴訟を起こすとなると、けっこうな労力が掛かります。
誰かと連絡を取り合ったり、引用した記事の写真にあるようなデモをしたり、弁護士に相談したり、それだけで1か月分くらいの労力は軽く掛かってしまうでしょう。
横断幕の作成費用や交通費、出先での食費も掛かります。

でも、帰って来るのは、装備費のトータルであって、訴訟をするのに要した時間の対価まで、補償してもらえるわけではないですよね。
しかも、この手の訴訟を起こしてしまうと、今後、自身が仕事の紹介をしてもらえなくなる可能性があります。
もちろん、訴訟をしたからといってグッドウィル側で労働者を区別することは表向きはできないとは思いますが... グッドウィル側にしてみればトラブルメーカーですし、紹介した仕事先で、勤務中に「装備費の返還訴訟に加わらないか」と触れ回られるのは嫌でしょうから、まず、新規に仕事を紹介することはないでしょう。
逆に、「仕事の紹介をされなかった」からと言って、グッドウィルをさらに訴えることはできないはずです。

そう考えると、この訴訟は、訴える側にとって、どのような意味があるのでしょうか。
もちろん、グッドウィルの悪行を世に知らしめるというのは、意義があることだとは思います。
でも、その行為によって、訴えた本人が失うもののほうがはるかに大きいのではないか、と思えてなりません。
損得勘定で考えてはいけないのでしょうけど。