学歴の詐称について、議員や公務員、大学教授等で問題となっていますが、一部の対応については、どうも釈然としないところがあります。
Yahoo!ニュース - 時事通信 - 「高卒以下」と詐称、507人停職に=就職氷河期に集中-横浜市と言う記事が出ていました。
横浜市は31日、大卒や短大卒にもかかわらず、学歴を詐称して受験資格が高卒以下などの職種で受験し、採用されていた運転手などの技能職員507人を停職1カ月とする懲戒処分を発表した。同市では過去最多の処分者数となった。処分時期は市民サービスへの影響を考慮し、9~11月の3回に分ける。
処分を受けた職員の学歴は大卒が375人、短大卒などが132人だった。所属別では、教育委員会事務局が137人と最も多く、資源循環局90人、交通局 88人と続いた。1995~2002年度に267人と集中しており、市は「就職氷河期が影響したのではないか」とみている。
高校しか卒業していない人が「○○大学卒業」と偽り、大学卒業を採用の条件としている募集に応募して採用されてしまった場合であれば、それは問題視されてしかるべきでしょう。
その場合は、停職どころか、即刻、免職処分にすべきだと思います。
もちろん、大学を出ているからと言って、その人が高卒の人より優秀とは限りませんが、大学名から、入試を通ったこと、4年間は相応の教育を受けて来たことを考慮して採用するかどうかを決めるのですから、「出ていないのに出たことにする」という詐称はいけません。
これは、普通に理解できます。
逆に、短大や大学を出た人が、高校卒業者を対象とした募集を応募するのに、どのような問題があるのでしょうか。
この点が、私にはどうにも理解できません。
問題があるとしたら、「高校卒業だけの人の就職の機会を奪った」「より高度な教育を受けて来たことを隠していた(不誠実だった)」ことでしょうけど、停職処分を受けるほどの悪いことなのでしょうか。
向学心があって、学びたいことがあって、短大や大学に進学して勉学に励んだ人に、「あなたには高い学歴があるから採用できないし、応募も受け付けられない」と言ってしまっては、若者の学ぶ意欲をそぐことになるのではないでしょうか。
そうしたメッセージになってしまわないのかと危惧しています。
決して学歴偏重を主張する気はありませんが、採用に当たって、高い学歴を持つ人を明確に否定したり、排除したりして良いのでしょうか。
「大学を出ている人は、運転手や清掃員には採用しない」という納得の出来る理由が、私には分かりません。
別の側面として、一般企業の場合の話で公務員の場合がどうかは個別には把握していませんが、高校卒業の人と、大学卒業の人とでは、初任給がかなり違うのが普通です。
高卒者を募集しているところに大学卒業の人が「高卒です」と偽って応募して採用されて、採用されてから「実は大学を出ているので、初任給を上げて欲しい」と言ったのであれば、それは問題です。
でも、今回処分を受けることになった彼らは、「高卒者扱いの待遇で良い」と考えて、賃金の面では両者合意の上で採用・雇用されていたはずです。
「実は、もうちょっと勉強していました」と後で判明したからといって、何故このような社会的な罰を受けなければならないのでしょうか。
逆に、これまで「自分は大学を出ているのだが、大学を出ていることが知られたら問題になるかも知れないので、あくまで高卒であることを通そう」とずっと我慢して来たのでしょう。それによって、精神面ではストレスを受けたこともあったのではないでしょうか。
大学卒なのに高卒の待遇で我慢して、大学在籍歴についても一切口に出せない、そうした生活を送って来ていて、彼らは十分な罰は受けて来ていると思います。
単に高卒者の採用の機会を奪った不誠実さだけが理由だとしたら、停職処分は重過ぎだと私は思います。
そもそも、「短大か大学を出た人は、自動的に応募資格を失う」という差別的な応募基準のほうが、問題ではないのでしょうか。
「停職処分は不当」と裁判を起こせば、司法の場で「高学歴であることを理由として不採用または応募を不受理とする採用基準は不当な差別」という判断が出て、横浜市側が負ける見込みもあると思うのですが...
もちろん、賃金の問題もありますので、上述したように「採用後はあくまで高卒者待遇として扱う」という両者の合意が前提の話であり、採用後に「実は大卒だったので、その分の給与の追加支給を求める」などという主張は、あってはならないことだと思っています。
でも、裁判を起こすようなタフさがある人は、そもそも学歴を低く偽るようなことはしないでしょうから、この問題は、裁判に発展することもなく、滞りなく停職処分が行なわれて、それで終わりなのでしょうね。
■関連記事
パトス 507人が学歴詐称 大卒と高卒と 横浜市
「【大変だ!】横浜市職員、700人が「学歴詐称」」事件です‐事件ニュース:イザ!
教育カウンセラーの独り言: 横浜市職員、700人が学歴詐称 技能職員試験で採用
moonweblog: 横浜市職員にも学歴詐称は
507人に停職1カ月、横浜市が学歴詐称で処分 - 道産子投資道 - Yahoo!ブログ
terada takao
トラツクバック有難うございました。お返事遅くなりまして、申し訳有りませんでした。御意見は、あなた様のおっしやるとおりです。今ままで公然の秘密で、なぜこんなに問題化したのか疑問に思っています。今後とも何卒よろしくお願い申し上げます。夏のお疲れが出る頃ですので、御身大切にくれぐれも御自愛下さい。
管理人
terada takao様、コメント及びお気遣いありがとうございます。
今まで公然の秘密だったとは、寡聞にして存じ上げませんでした。
今回、停職処分を受けることになった方々は「何で今さら」という気持ちでいっぱいではないかと思います。
何故、こんなに問題化したのか、ですが、私見ですが、横浜市の幹部の保身のためだと思っています。
最近は、メディアの追求が厳しいですので、ちょっとでもおかしなことを放っておくと、自身に火の粉が降りかかってくるのでしょう。
だから、自分が糾弾されないように、当事者を罰するパフォーマンスをしているのだと思います。
ブログの本文に書きましたが、そもそも「高い学歴を持っている人は、応募しては駄目」という逆差別的な採用基準がいけないのでしょう。
それを見直そうとしないのが、私には不思議でなりません。
澤田 広光
就職試験も公平公正は、必要だと思います。経済的に子供全員を大学に行かせられない場合も有るかと思います。試験は、出た結果でしか判断ができません。弱肉強食の世の中では有りますが、ルールは必要です。「わからなければOK」そんな事件がいっぱい有りますよね。安い賃金で人を使えればOK。その考え方にも疑問を持ちます。世の中が暗くなりそうな気がします。「向上心や一生懸命」を評価するのは、難しいのですが、自分は「そうありたいものだ」と思っています。
管理人
澤田 様
コメント、ありがとうございます。
「学歴社会の中、大学を出ていないという理由で採用されない人達にも就労の機会を与えよう」という考え方を否定する気はありません。
かと言って、採用試験の場で「あなたはこの仕事に関し、能力も働く意欲もお有りりだ。ご家庭の事情で何とか就労の機会を得たいということも理解できます。これまで相当の努力をされたのでしょう、高校卒業後、奨学金を得て大学、そして大学院まで出られているのですね。本当に素晴らしいと思います。はい、あなたは不採用です。理由は、ただ一つ、大学院を出てしまっているからです。お引取り下さい。」と言われて、納得しなければならない社会、「大学になんて行かなければ良かった」と思わざるを得ない社会は、自分は、間違っていて、正す必要があると信じています。
賃金の高い低いはまた別の問題です。本記事における私の主張は「高学歴の人には就労のチャンスを与えない」という差別は無くすべきだということです。