BABEL 【感想】

TSUTAYAのDISCASでDVDをレンタルして見ました。
昔話題になっていてリストに登録したままになっていたのが送られて来たので、視聴した次第です。
残念ながら、あまり良い評価をつけたくない作品でした。

アメリカ(メキシコ)、モロッコ、日本での一見何の関係もなさそうな3つの出来事が実は繋がっていたこと、同時進行のように見せておいて実は同時でく時間軸にずれがあったことなど、視聴者を楽しませる工夫はそれなりにされていました。
また、タイトルにある「バベル」に由来する、言葉が通じないことに対するもどかしさも表現されていたとは思います。

しかし、監督のほんの数回の来日経験だけに基づく偏見に満ちた日本への理解、すなわち監督の日本への無理解が、すべてを台無しにしてしまっています。
これほど、日本の若い女性や耳の不自由な人を冒涜した映画を、私は知りません。
菊地凛子演じるチエコの、破廉恥な行動、未成年飲酒、ドラッグ、映画の世界とは言え、見るに堪えません。
また、チエコの母親の死因が銃による自殺というのも、銃の保持が極めて難しい日本の状況にまったく合っていません。

そもそも、本作品のストーリー上、日本が登場する必然性を何ら感じられませんでした。
日本の役者さんは日本国内の撮影のみでほとんど済むようなストーリーです。
唯一、事件に使用された猟銃の所有者という関連も、「海外でハンティングをして、感謝の気持ちでガイドに猟銃をあげた」というのはまったく説明になっていません。日本での銃の管理は、例え海外だとしても(そもそも、そんな簡単に海外に持ち出せるのかも疑問ですが)、そんな簡単に譲渡が許されるものではありません。ですので、「話を聞く」だけでなく、少なくとも書類送検は必要なレベルでしょう。「ああ、ガイドにあげましたよ」「そうですか」なんて、ありえないのです。
まして、奥さんが銃で自殺したら、普通の神経の男性であれば、その後は猟銃でさえ、保有をやめるでしょう。と言いますか、銃の管理不行き届けで、銃の保持さえ禁止されるはずです。その後で、海外に猟銃を持ち出してまでハンティングをするという設定さえ、おかしいです。もしかしたら、奥さんの銃での自殺のほうが猟銃の海外での譲渡よりも後だったのかも知れませんが、その場合も、奥さんの自殺の時点で他に所持している拳銃・猟銃は現物確認されて、その後の保持を禁止されるものでしょう。

ストーリーの一番の欠点は、チエコの母親の自殺の原因・動機が作中で何一つ語られていないことです。
とにかく、日本編のあまりの酷さ、この一言に尽きる映画でした。