ライブドアの株価急落と損害賠償請求

Yahoo!ニュース - 時事通信 - ライブドアに賠償請求へ=株価急落で損害 - フジや個人株主という記事が出ていました。
このブログでも、先日ライブドアの株式持ち合いという記事で書いた通り、予想通りの展開です。

*ライブドア <4753> の粉飾決算疑惑で、第2位の株主であるフジテレビ <4676> は21日、株価の急落で損失を被ったとして、堀江貴文社長ら経営陣や同社を相手取り損害賠償請求訴訟を起こす方向で検討に入った。今後、上場が廃止されれば、個人株主の提訴が相次ぐとみられ、ライブドアは「背信行為の代償」(大手証券)に苦しむことになる。 
しかし、私の考えでは、フジテレビの損害賠償請求は認められる公算が強いとしても、個人株主が提訴しても認められる可能性は限りなくゼロに近いと思います。

以下、私は法律の専門家ではありませんが、5年ほどの株式投資経験に基づいて、理由を書きます。

■フジテレビのように株式交換をしてライブドア株を持っている場合
これは、ライブドアから直接株式を譲渡された点が重視されるでしょう。
企業間の株式譲渡の前提として、ライブドアの経営状態に関する客観的な評価があって、それに基づいて株式交換に至ったわけです。
経常利益が黒字で信頼できる企業と思われていたものが、実は粉飾決算で経常赤字だったとなれば、ライブドア株を譲渡された企業は、「そもそもそんな経営状態では、業務提携も株式交換も行なうはずはなかった」という主張をするでしょう。
その対応として、業務提携の解消、株式交換の無効化、そして損害賠償を請求するわけです。
ライブドアのした行為は詐欺行為と認定される可能性が高いので、損害賠償請求も認められるでしょう。
逆に、この損害賠償請求が認められなければ、「取引において詐欺行為に遭ったことが分かっても、取引相手に損害賠償が出来ない」ということになってしまいます。
日本はまっとうな法治国家である以上、そんな結論になるはずがなく、フジテレビを始めとする「ライブドアから直接株式譲渡を受けた」企業の損害賠償は認められるべきだと私は考えます。

■個人投資家が市場を通じてライブドア株を購入した場合
投資の常識で考えれば、個人が市場を通じて売買して発生した損失を、その株式を発行した企業がすることなど、絶対にありえません。
さらに、国がライブドア株の被害者救済をするという話も、絶対にあってはならないことです。
個人株主の中で、感情的に提訴する人は現れてくると思いますが、基本的に、個人株主側に勝ち目はないでしょう。

そもそも、株価はライブドアが決めているわけではなく、相場、すなわち売り手と買い手の需給関係で、売り手と買い手の合意で決まるものです。
もちろん、ライブドアの公式発表の内容は、売り手と買い手が参考にする情報ではあります。
しかし、企業が好決算を出しても、市場は織り込み済みで材料出尽くしと判断して株価が下がることも、よくあることです。
市場で株式を買う相手は、ライブドアではなく売り手であり、証券会社や証券取引所には仲介をしてもらっているに過ぎません。
また、買った時の売り手は、基本的には特定されません。
株価が下がって損をしたからといって、株式を発行した企業がその損失を補填することなど、ありえないのです。
それが、相場というものですから。
それを理解せずに「個人株主はライブドアに損害賠償請求をするという手がある」などと考えたり、上記引用のようにメディアが報道するのは、株式に対する無知のなせる業なのでしょうね。

では、個人株主には何も出来ないかというと、唯一残された手立てとして「上場廃止になったことで市場で売買することができなくなった。上場廃止になったきっかけである粉飾決算を行なったライブドアは、適正な価格で一般投資家から株式を買い取るべき」という請求ではないかと思います。
そして、これが大事なのですが、その適正な価格というのは、ライブドアの保有する資産を発行済み株式数で割った値になるでしょうね。
ライブドアは無借金経営で、一部の報道では資産が1,500億円ほどあると言われています。
仮にこの数値が正しいとして、発行済み株式数で割ると、1株あたり150円くらいでしょうか。
そして、この金額は、上場中に落ち着く株価になるでしょう。
今は、狼狽売り、信用買いの追証による強制決済で売りが出ていますので、今月中には株価が2桁になる場面が間違いなくあるでしょう。
しかし、最終的には純資産を発行済み株式数で割った数値に落ち着くはずです。
個人投資家は、この株価で市場で売買できるチャンスを与えられるわけですから、訴訟を起こす必要はないと言うか、訴訟に出ても得することはないのです。
逆に言うと、訴え出たところで、信用取引で600円台や700円台で購入し、追証による強制売買で100円以下で返済売りさせられた株主は、「自分の身の程を知らずに売買した」ことによる自己責任と司法から一蹴されるのがオチなのです。また、自己破産しても、株の信用取引による債務は免責されません。

なお、上述したように、株式交換をした相手先企業からの損害賠償請求が認められれば、ライブドアの純資産はぐんぐん減ります。
フジテレビに追従する動きがあれば、ライブドア株の株価の落ち着く先は、どんどん下がることでしょう。

IT業界に身を置く者として、今後も注視するつもりです。