ゆとり教育の見直しと子供の学力低下

昨日、夜のニュースを見ていたら、どうやら今のゆとり教育を見直すことになりそうで、授業時間を1時間増やす可能性があるそうです。
先月子供が産まれたばかりなので、興味深くニュースに見入りました。
そして、将来のことを真面目に考えた時、現在のゆとり教育の実態を知って、暗澹たる気分になりました。

驚いたのは、最近の授業内容の縮小の度合いです。
例えば、2000年には同じ分母を持つ分数の足し算を小学3年生の後半に教えていたのを、今では小学5年生の後半に教えているとのことです。
これには唖然としました。
はっきりとした記憶はありませんが、私が小学生の頃は同じ分母の分数の足し算は小学3年生の前半には教わっていたと思います。

もちろん、教える順番を変えただけということも十分考えられますが、2年も後ろにずらすということは、尋常ではありません。
おそらく、以前は小学校で教えていた内容で、今は小学校で教えなくなった内容というのも少なくないでしょう。
具体例として、今は、小学生には台形の面積を求める公式は教えなくなったそうです。
補助線を引いて、2つの三角形の面積の和として求めるように指導しているそうです。

確かに、台形の面積は、補助線を使えば済む話ですが、私はそれでは済まないと思います。
長方形の面積の求め方と、台形の面積の求め方、その2つの関係を『感覚で』理解することが重要だと私は思います。
簡単な公式の組み合わせに置き換えて解くことは、解く手間を増やすことになり、何より直感性を育むことにならないと思います。
すべての数学の公式は実は簡単な公式から導き出したものであり、簡単な公式から複雑な公式を導き出す過程を学ぶことが、数学の探求だと思います。

探究心を忘れたら、人は成長しなくなります。
小学校の初等教育の現場から、簡単な台形の公式とその公式を導き出す過程を教えるのを放棄したら、日本の中学・高校の教育は一体どうなってしまうのでしょうか。
それは、大学生の質の低下にさえ直結しています。
現に、私の身の回りを見ても、最近の新入社員の学力の低さはかなり危機的だと感じています。一流国立大学の理系の大学院の修士課程を出ている新入社員であっても、簡単な報告書でも論理的に筋が通っておらず、報告書中、縦横に見て数字の足し算をしたら当然合うべきところが合っていない、そんな報告書を平気で出して来ます。「何で会社で国語や算数を教えなければいけないんだ」と思ったことは、数え切れないくらいあります。

小学5年生の後半でようやく同じ分母の分数の足し算を教える国、日本と、小学生から2桁の掛け算まで暗記させている国、インド。
今の小学5年生はあと20年すると30歳過ぎ、研究やビジネスの分野でもっとも脂の乗った時期になるはずです。
20年後に科学や技術の分野で、日本とインドでどちらが優位にいるかと聞かれて、まともな人であれば、その問いに「日本」と答えることはできないでしょう。

狭い国土で資源に乏しい我が国、日本。
そして、若者の学力は低下の一途。
観光で立国しようにも、名所はモラルのない人によって既にゴミだらけにされており、もはや魅力は小さいです。
我々は、発展途上国を支援するのではなく、発展途上国を見習って国力を高めるにはどうすればよいかを真剣に考えるべき時期に来ているのではないかと思います。

■関連記事
毎日が発見!: <教育再生会議>「ゆとり」見直し明記へ
★★★ 桜 魂 ★★★ : ◆【正論】少子化で懸念される量より質の低下
越後屋ペンさんのダテめがね: 学力低下