今日、息子の小学校の秋の運動会がありました。
小学生の低学年ですと、まだまだトラックを走るのがぎこちなく、カーブで第1レーンをキープして走るのは難しいようでした。
それは、低学年のクラスの代表者によるリレーでも、同じでした。
そんな中、気になる出来事が起こりました。
低学年のクラスの代表者のリレーで、最終走者がゴールインしてから、「ルール違反があったので、着順に変更があります」とのアナウンス。
嫌な予感がしました。
ちなみに、うちの息子は代表者ではなく、そういう意味では私は当事者というわけではありません。
アナウンスによると、「内側からの追い越しがあったので、ルール違反として、着順を入れ替えます」とのこと。
私は、当該リレーのすべての追い越しを見ていたわけではありませんし、そもそもどの走者のどのタイミングでの追い越しのことを言っているのかまでは言及がなく、以下は、あくまで私の推測です。
もしかしたら、前の走者がちゃんと第1レーンを走っているのに、後続の速い走者が無理やり第1レーンの内寄りから強引に抜いたのかも知れません。
しかしは、あるいは、前の走者がミスをして大回りをしてしまって、後続の走者が結果的に内側から追い抜いてしまった可能性があるのではないか、と。前述の通り、実際に、ちゃんと第1レーンを走れない子も散見されましたので、以下はその仮定が正しいという前提で書いています。
さて、そうした場合でも「内側から抜いてはいけない」というルールには、必ず従わなければならないのでしょうか。
ネットで検索してみたら、まさに同じような状況について娘に伝えたい「運動会から学ぶこと」 | Decent Pointというページが見つかりました。(私はFacebookをやっていないので、残念ながら、こちらのページにコメントを残すことが出来ません。)
これを読んで、何かがおかしいと思いました。
内側から追い抜いていけないというのが絶対的なルールであれば、どうなるでしょうか。
ルールを悪用したら、次のことが出来てしまいます。
後続のランナーに追い越されそうになったら、自分からわざと外側に寄って、抜かせないようにすることができるでしょう。でも、陸上競技において、そんな駆け引きは、見たことがないです。
自分が追い掛けている側であれば、外側から追い抜きを掛けて少しの間だけ前に出てから、故意に減速して相手に内側から抜かせることで、相手をルール違反に追い込むことも出来てしまいます。
さらに、極端な話ですが、自分が先頭走者の間に故意にトラックの最も外側に走路を取れば、それから後続のランナーは決して前に出られない(抜かされない)状況になってしまいます。
そう考えると、絶対的なルールではないのでは、という疑念が浮かびます。
さらに調べてみたら、陸上競技 | 新学社というのが見つかりました。
案の定、こちらの走競技共通ルール「(2)エ」には「オープンレーンで前の走者を追い抜くときは外側から抜くのが原則だが,内側があいているときは,内側から追い抜いてもよい。」と、しっかり書いてあります。
これは、冷静にじっくり考えてみれば、分かる話ではないかな、と。
そもそも、抜く時に外側から抜くのは、危険行為によって怪我をするのを避けるため、というのが理由の一つでしょう。
速い走者が遅い走者を外のレーンから抜いてから元の内側のレーンに戻るようにすれば、接触を避けることが出来ます。もしも、速い走者が遅い走者を内側から抜くのを是としてしまうと、カーブでの接触では追い抜かれる側の走者が内側から突き飛ばされてしまう形になって、危険極まりないです。だから、外側から抜くのが原則になっているのでしょう。
別の例として、もしも先を行く走者が何らかの事情(カーブで遠心力に負けて第1レーンを維持できなくなった、等)で第1レーンを空けて、第2レーンを走っていたとします。後続の走者が追い抜く際に、「外側から」というルールに従おうとすると、後続の走者は第1レーンから第3レーンあたりに走路を変えて、追い抜いてから、また第1レーンに戻ることになります。実際に走ってみれば分かりますが、カーブでこのような走り方をしたら、非常に危険です。下手をすれば、後続の走者は勢い余ってコースアウトしてしまうでしょう。
さまざまな状況を想像すれば、「内側から抜いてはいけない」というのは、絶対的なルールではありえないと分かるはずなのです。
が、学校教育でも、大学での教員教育でも、「内側から抜いてはいけない」とだけ、背景説明なしで教えられているというのが実状なのかも知れません。
今日のうちの小学校での出来事の真相は、分かりません。
が、上記にリンクを示した学校の事例は、明らかに学校の先生がルールを誤解していたからに他なりません。
もっとも、私自身、今日の出来事に遭遇するまでは単に「内側から追い抜いてはいけない」という理解でしたので、偉そうなことは言えませんが。
さて、最も可哀想なのは、内側から追い抜いてしまった子供です。
最近、学校の先生が、「ルールだから」という理由で、思考停止に陥っているのではないか、と思う事例がよくあります。
例えば、先日、学校給食のパンの生地の内側にハエが多数紛れ込んでいて、「数が少ないので、取り除いて食べるように」指示した例がありました。もし、家庭で買って来たパンにハエが紛れ込んでいたら、それを自分か家族が食べるかと考えたら、多くの家庭であれば「食べない」ことを選択するでしょう。もちろん、学校給食で主食のパンを抜きにしたら、子供が午後お腹を空かせることになるのでしょうけど、だからと言って子供にハエ入りのパンを食べさせるというのは、思考停止に他ならないと思います。
今回のリレー競技での内側からの追い抜きも、上記のように、「いかなる場合であっても内側から抜いてしまってはいけない」と解釈をすると、極めて危険なケースが出て来ることは容易に想像できます。そこで「何か例外規定があるのではないか」と思考して調べさえすれば、「内側があいているときは,内側から追い抜いてもよい。」という規定に到達できるはずです。実際、私は、順位変更のアナウンスを聞いて、すぐにスマホで調べて「絶対的なルールではない」と知りました。私が走者の関係者であったら、その場で審判団にクレームしていたかも知れません。
確かに、世の中には、理不尽なルールもあるでしょう。でも、よく調べてみればちゃんと例外規定が定義されていることのほうが多いのです。
話を元に戻して、内側から抜いてしまった子供は、本人は一生懸命走っていたにも関わらず、全校生徒とその父兄の目の前で「ルール違反」と言われてしまったのです。
状況によってはルール違反ではなかったかも知れないのに。
これが当事者の心の傷にならなければ良いのですが。
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